この記事は、SYSKEN Advent Calendar 2022 12月22日の記事です。
ご挨拶
おはこんハロチャオ! からげんきを覚えそうな元部長のJunです。
いよいよクリスマスですね。クリスマスといえば家で映画を見たりケーキを食べたりするんでしょうか。僕は仏教信者なのでクリスマスは関係ないんですけども。
さて、映画といえば没入感や臨場感があると嬉しいですよね。嬉しいと言え。人間の感覚の87%は視覚と言われるくらいなので没入感は視覚情報から来ることがほとんどです。没入感を高めるために昨今では4K HDRや3D映像を使った劇場や配信サービスがあります。映画以外のコンテンツとしてはVRとかもありますね。
では、臨場感はどこから来るんでしょうか。臨場感、あたかもその場にいるように感じるあれです。もちろん、視覚からも来るんでしょうが、映画で見える視野は映されている部分のみ。世界観などの没入感はその範囲で足りるかもしれませんが、その現場の状態は視野の外の情報がないと物足りませんか?
視覚よりも広い部分を補える感覚。そう、臨場感は聴覚から来るのではないでしょうか。今回は映画の臨場感生み出す音響のあれこれについて個人的な主観と偏見に基づいてつらつら紹介します。なんかすごい技術的なあれこれについては書きません。こんなのでいいのか。
サラウンドって
映画の音響と聞いてパッと思い浮かべるものといえば「サラウンド」という言葉が多いのではないでしょうか。
【サラウンド】オーディオなどで,前方からだけでなく,左右や後方からも音が聞こえるような状態。また,そのようにする仕組み。立体音響。
立体音響。なんかすごそう。
いわゆる普通のテレビや動画の音はステレオと呼ばれる2chのものになります。2chと言ってもレズバをするあそこではない(゚д゚) サラウンドはこのステレオの2ch、前方の左右に加えて後ろ側や上側にスピーカーを足したものになります。
5.1chとかきいたことないですか。これは右前、左前、正面、右後ろ、左後ろの5つのスピーカーと1つのサブウーファーで構成されているものになります。この場合、水平方向の前後左右に音を配置して表現することになります。後ろから何かが迫ってきたり、前から後ろに何かが駆け抜けて行ったり。画面に映っていない部分の表現を音にさせることで画面の外にも世界が続いていることを視聴者に想像させることができます。
サラウンドは、この5.1ch以外にも7.1.4chやBS8Kで使われる22.2chなどが現実で使われるものとしてあります。これらのようにX.Y.Zchとしてスピーカーのチャンネル数は表現されます。Xが水平方向(耳と同じ高さ)のスピーカーの数を、Yが低音を表現するサブウーファーの数を、Zが頭上にあるスピーカーの数を表しています。
右前と右後ろから同じ音を出せば右真横から音が出ていると錯覚させることができるので基本的には水平方向に少なくとも4つあれば全方向の音を表現することは可能になります。正面のスピーカーは正面の音の位置感を向上させるためにあります。(正面がズレてると気持ち悪いので)
DTS:XとかDolby Atmosって
最近、Dolby AtmosとかDTS:Xという言葉を耳にしたことはありますか?これらはオーディオのコーデックの一つになりますが、今までの5.1chや7.1.4chのサラウンドとは何が違うんでしょうか。
今までのサラウンドを表現するための規格は5.1chなどあくまでスピーカーの数に依存していました。つまりは、「どのスピーカーにどの音をどれくらい流すか」ということがあらかじめ動画を書き出す段階で決まっていたのです。これらの問題は、製作者の意図したところに必ずスピーカーが置かれるとは限らない、という点です。製作者の意図して場所ではないところにスピーカーがあると不自然な音の位置になり、映像体験が損なわれることになります。
この問題を解決するために生み出されたのがこのDolbyAtmosやDTS:Xになります。これらはオブジェクトオーディオと呼ばれ、音が位置座標を持っています。この位置座標をもとに再生時にスピーカーがレンダリングを行うのでどのような環境であっても製作者の意図した場所に近いところから音を出すことができるようになります。
つまり、5.1chの環境でも、7.1.4chの環境でも設置環境に合わせて最高な音が常に提供されるわけです。クオリティは製作者にもよるが
映画の規格でこれらのコーデックが使われているのはIMAXとDolby Cinemaです。Blu-rayもこれらのコーデックが収録されているものもあります。多くの場合英語のみAtmosで日本語は5.1chということもあるが
再現環境って
色々書きましたが、じゃあこういうリッチな音源はどこでどうやって聞けるねん、って話ですよね。こういったもの再現環境は大きく分けて2種類あります。実際に再現しているものと、擬似的に再現しているものです。
まずはリアルで再現しているもの。いわゆるホームシアターシステムってやつですね。これはそのまんまスピーカーを6個とかをアンプから線を伸ばして配置するやつです。SONYやDENON、YAMAHAが販売しています。これはすごくちゃんと置けば聞く人全員が恩恵を得られるシステムです。もちろん値段もお高め。
次は擬似的に再現しているものです。バーチャルサラウンドとか言われるやつですね。これは2つとか3つのスピーカーから人の錯覚を利用したり壁の反射を利用してあたかも周囲にスピーカーがあるように聞こえるようにするものです。これは人によって騙されやすかったり騙されにくかったりして効果はまちまちです。Sonyはテレビについているスピーカーだけでサラウンドを再現するS-Force フロントサラウンドという技術をリリースしています。いずれににしてもこれは人によって全然違います。少なくとも僕は感じなかった。
最近はSONYが4台のスピーカーを周囲に置くことで擬似的に12個のスピーカーを設定するものを売り出しています。これはリアルで擬似再現してるもので、みんなが効果を得られ、かつ設置が楽というすごくいいやつですね。結局高いけど。
空間オーディオって
さて、つらつらとサラウンドのあれこれについてざっくり説明してきたわけですが、正直学生の皆々はサラウンド環境を持っている人は少数だと思われます。「ハァ〜そんな高価なシステムはオラには関係ねぇだ〜」とTwitter片手に読んでいるあなたもiPhoneユーザーとかであればこの「空間オーディオ」くらいは聞いたことあるのではないでしょうか。
空間オーディオの話に入る前に、貴方の耳は何個ありますか? 大抵は2個の人がほとんどではないでしょうか。
さっきまで色々スピーカーが何個だとかコーデックがどうだとか書きましたけど結局は左右の2つの耳で音は聞くわけです。今までステレオがずっと台頭している背景にもこれがあり、結局2つの耳で聞くなら2つのスピーカーでええやん、という前提でステレオが覇権を握っています。知らんけど
私たちの耳は左右に入ってくる音のバランスでどの方向から音が来ているか、ということを判断しています。右耳がちょっと多かったら右から、左耳がちょっと多かったら左から、というふうにですね。左右の音が均等なら正面からということになります。では真後ろからの音はどう聞こえるでしょうか。左右にズレてなければ左右の耳には均等に音が来ますよね。考えてみると正面からの音も真後ろからの音も同じように聞こえるはずです。しかし我々は前からの音、後ろからの音、と聞き分けることができます。なんででしょうね。
その秘密は「耳たぶの形」と「頭」にあるらしいです。前からくる音と後ろからくる音はバランスは同じでも頭や耳たぶでの響き方が違うそうです。上下方向においても同様です。これらの認知特性を研究することでイヤホンのような2chの媒体でもサラウンドの音を表現することができるようになります。ASMRやバイノーラル録音で使われるダミーヘッドで録音した音が実際にその場で聴いているように聞こえるのは物理的に似せているからです。
先ほど述べた「空間オーディオ」、これはAppleのものですが、これは再生する側で人の認知特性に合わせた再生をすることでサラウンドで聴いているように感じさせるものにになります。Appleはこれと加速度センサーを合わせることで頭を動かした時に音の出所は移動しない、ということをすることであたかもそこにスピーカーがあるかのように錯覚させています。
Apple以外ではSonyが360Reality Audioを、DolbyがWindows PC向けにDolby Atmos for Headphoneをリリースしています。Windowsにも標準でWindows Sonic for Headphonesが搭載されてますね。Sonyはイヤホンだけでなくネックスピーカーでもこの技術を搭載しているので科学の力ってすげーって思いますね。
これらを使えば、NetflixやPrime Videoからサラウンド音響を再生することができますね。まぁPrime Videoはサラウンド対応の再生環境がかなり限られているんですが。
こう言うのは言葉で色々言っても仕方ありません。体験しないとおそらく価値はなかなか伝わらないと思います。ぜひ一度どこかで体験することをお勧めします! リッチな再生環境で、素敵な映画体験を! メリークリスマス!
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去年度作った5.1chのコンサート映像をぜひ聴いてください。
時間があればサラウンド録音のあれこれについて書いたんですが直前にコロナになってしまったのですまんと言う気持ち。
スケジュールに余裕があれば卒業までに技術の継承のためにも書きたいですね。言うだけ番長
書けば書くほどつまらない記事が錬成されてしまう……
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