プロコンの同人CDと同人誌を国立国会図書館に納本した話

この記事はSYSKEN Advent Calendar 2015の15日目の記事です。

第26回プログラミングコンテストで販売したサウンドトラックCD「Program Your Beats」ですが、この度国立国会図書館(以下、国会図書館)に納入されました。これによってあのCDは、日本や、国会図書館が無くなったりしない限り永続的に保存されることとなります。胸熱ですね。

そもそも学生が制作したほぼ同人製作といっても良いようなCDが国会図書館に納められたのか、また国会図書館に納める際の簡単な手順の紹介をしたいと思います。

国立国会図書館って知ってた?

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Photo by 663highland (CC-BY 2.5)

「国立国会図書館」は昭和23年(1948年)に設立された日本における唯一の国立の図書館で、国会法」の第130条の規定に基づき、「国立国会図書館法」でその設置が定められています[1]

「国会図書館」という名前なので「国会議員しか使えないのかな?」と思いがちですが、実際にはそんなことはなく、我々のような一般市民にもサービスが提供されています。国会図書館では様々な役割を担っていますが、その中でも一番大きな役割が、日本で発行された出版物を収集し、整理・保管するといった役割です。現在では雑誌や新聞を除いた図書だけでも約1000万冊以上を所蔵しており、正真正銘日本最大の図書館であります。

ではどのようにして、そんなにも多くの出版物を収集しているのでしょうか。その答えはさきほど出てきた国立国会図書館法の中にあります。

(前略) 出版物を発行したときは、(中略) 文化財の蓄積及びその利用に資するため、発行の日から三十日以内に、最良版の完全なもの一部を国立国会図書館に納入しなければならない

国立国会図書館法 第11章 その他の者による出版物の納入 第25条

そうつまり、国内で発行されたすべての出版物は、国会図書館に納入することが義務づけられているのです。この時の「出版物」とは主に「頒布の目的で相当程度の部数が作成された資料」とされており[2]、例え出版社大手の文庫本であろうが、個人が制作した同人誌であろうが、出版物を発行すれば、発行者には納入の義務が発生するのです。

ちなみに、もしあなたが出版物を発行したにもかかわらず、国会図書館に出版物を納めなかった場合、以下の様な罰則も定められています。

発行者が正当の理由がなくて前条第一項の規定による出版物の納入をしなかつたときは、その出版物の小売価額(小売価額のないときはこれに相当する金額)の五倍に相当する金額以下の過料に処する

国立国会図書館法 第11章 その他の者による出版物の納入 第25条の2

また、国会図書館に納入される出版物は「本」だけではなく、音楽を収録した「CD」や映像を収録した「DVD」も納入する必要があります。CD・DVDは「パッケージ系電子出版物」として扱われており、アニメのBlu-rayや主題歌CDなんかもこの枠組みで国立国会図書館に収められているはずです(この一文で何かいいことを思いついたあなた、残念ながら音楽・映像資料の貸出や複写サービスは行われていません[3])。

ここまでだらだらと書きましたが、今回販売した「Program Your Beats」は「配布を目的として出版された頒布物」であったため、法律により国会図書館に納入する必要があったのです。

そうだ、納本しよう

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(以降、話を簡単にするために、若干表現がおかしいですがCDの納入についても「納本」という表現を使います)

というわけで「納本しよう!」となったわけですが、納本なんて経験したこともないのでどうしたらいいのかなんて全く知りません。しかし時代はインターネットや検索エンジンという便利なものがあって、納本の方法は簡単に調べることができます。というわけでインターネットで調べた限り、個人が国会図書館に出版物を納めるための方法は、主に以下の2通りかと思います。

  1. 国会図書館に発行者が出版物を直接持ち込む
  2. 国会図書館に発行者が出版物を宅配物として送る

また、インターネット上には、自身の同人誌を国会図書館に直接持ち込んだ方も結構いらっしゃるようで[4]、私も人生経験の一つとして直接納本してみたかったのですが、法に定められている納入の期限である「出版から30日以内」の間に東京へ向かう用事がまったくもってなかったので、結局宅配物として国会図書館に発送することにしました。

発送先の住所は国会図書館のウェブサイト上に書かれています。送付先は2箇所あるようですが、今回製作したCDと冊子は官公庁の出版物ではなく「民間出版物」にあたりますので、「国立国会図書館 収集書誌部 国内資料課 収集第一係」に送ることになります。

ややこしい「納本」と「寄贈」

ここで気をつけたいのが、国会図書館の納本制度の中には「寄贈」というものもあるということ。この「寄贈」の扱いが非常にややこしいです(これで迷った)。

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通常、「納本」というのは出版物の発行者が国会図書館に納めることを言います。しかしながら、何らかの理由で発行者とは関係のない人が国会図書館に納められていない本を持っていた場合、その出版物については発行者でなくとも国会図書館に「寄贈」することが可能です。この寄贈を行うためには、保管の重複を防ぐために「寄贈申出資料」を書いて送付したり非常に面倒な手続きが必要になります[5]。つまり国会図書館で言う「寄贈」とは発行者以外が納本することなのです。

ここまでであれば「寄贈」という単語の意味は非常にシンプルなのですが、国会図書館の「代償金」という制度が話をややこしくします。

代償金とは発行者が国会図書館に出版物を納本すると、小売価格の5割について「代償金」という名目で国会図書館から発行者に支払われる制度で、2015年11月頃にこの代償金制度を悪用しているのではないかという話題がインターネット上で盛り上がっていました[6]。対して、先ほど紹介した発行者以外の「寄贈」の場合、「納本」のように代償金は寄贈した人や発行者に対して支払われることはありません。

ただ発行者が「納本」する場合に代償金が必要ない場合は、無償で「納本」することができます(ただし送料は自己負担になります)。この時には寄贈申出資料など手続きは必要なく、送付状に「代償金は必要ありません」と一筆書いておけば、そのように受理してもらえます。

発送しよう

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先にも書いたとおり、国会図書館への納入は納入する出版物を宅配物として送れば大丈夫です。ネット上では「封筒に寄贈本在中とだけ書いて出版物を送りつけても受け取ってもらた」との報告があるようですが、やはり突然送りつけるのではなく、送付状のようなものを同封するほうが職員の方にも失礼が無いかと思いますので、何か一筆書いて同封しましょう。

今回送付状に書く内容の要点としては、以下の4点。

  • 自分が発行者、もしくはその関係者であるという旨
  • 無償での納入であり、代償金は必要ないという旨
  • 内容物のリスト
  • 不備などがあった場合や受領書を送る際に必要な連絡先

参考までに今回作成した送付状のWordドキュメントファイルを公開しておきます。日本語がおかしい箇所があるかもしれませんが、そこはこっそり直して使ってください。

また、発送手段は日本郵政でも民間の宅配業者を使っても最終的に国会図書館に届きさえすれば大丈夫かと思います。今回は冊子とCDだけだったので、日本郵政のレターパックライトを利用しました。コンビニなどで買える専用の封筒が必要で、若干梱包に注意が必要ですが、A4までの大きさで、高さ3cm・重さ4kg以下であればレターパックライトを使うのがおすすめです。ゆうパックや民間宅配業者の宅配より安いですし、追跡しやすいというメリットもあります。

待つわ

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レターパックはポストに投函でもいいのですが、なんとなく「念のため」と思い、郵便局の窓口まで持って行きました。窓口の人には「国会図書館?へえ?」と言われ、なんかちょっと恥ずかしかったです。

送ってしまえばあとはもうひたすら待つしかありません。ちなみに納入が完了すると「受け取りましたよ」という内容が書かれた「受領書」が国会図書館から届きます。国会図書館への配達自体は2~3日で完了し、それから受領書が届くまではおおよそ1週間ちょっとかかりました。

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国会図書館の蔵書検索システムに反映されるのはそこからさらに1週間程度、書誌が作成され、閲覧できるようになるまではもう1週間程度かかります。今回納入した「Program Your Beats」とその付録冊子の「Special Your Beats」については既にその両方の作業が終了しているため、検索すると出版物の情報を見ることができるようになっています。おそらく国会図書館に行けばそれらの閲覧もできるようになっているはずです。

Program Your Beats – http://id.ndl.go.jp/bib/026849523
pyb

Special Your Beats – http://id.ndl.go.jp/bib/026842801
syb

まとめ

だらだらと書いてきましたが、最後に受領書に書かれていた文章の中にあったこの一節を紹介したいと思います。

ご寄贈いただきました刊行物は、広く公共の利用に供するとともに、国民共有の文化的資産として末永く保存してまいりたいと存じます

最初は「同人誌なんて保管する意味あるの?」なんて考えていましたが、文章や楽曲はその時代が色濃く反映されるものです。製作物単体で見ればそれが未来の何に役に立つか分かりませんが、こういった製作物が存在したという事実がその時代の文化を形成するのであって、どんな些細な製作物でもきちんと未来に残すことは非常に重要なことだと考えました。

皆さんも同人誌やCDを制作した際には、国会図書館に納入することを考えてみてはいかがでしょうか。


“プロコンの同人CDと同人誌を国立国会図書館に納本した話” への1件のコメント

  1. GAS より:

    同人誌の納本について取り上げさせていただきました。
    http://togetter.com/li/1008341
    不都合等ありましたら、ご連絡ください

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